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【調査レポート】Accenture Life Trends 2024 / Trend5. 「成功神話の解体」の成功って何?変わる価値観を企業と個人で考える

前回のTrend4.「テクノロジーの飽和点」の記事はこちら

成功神話の解体:企業と個人が向き合う新たな価値観

かつて、「成功」とは決まったルールに従うことで達成できるものと考えられていました。良い学校を卒業し、一流企業に就職し、昇進し、家庭を築く。これが一般的な「成功の方程式」でした。しかし、社会の変化とテクノロジーの進化がこの方程式を崩しつつあります。
Accenture Life Trends 2024の最後のTrend 5「成功神話の解体」では、成功の定義が問い直され、新たな価値観が生まれていることを指摘しています。本記事では、このトレンドが今どのように起きているのか、そして次に何が起こるのかを詳細に解説し、経営層が注目すべきポイントを整理します。

 

レポートはこちら

Life Trends 2024:ビジネスに影響を及ぼす5つのトレンド | アクセンチュア


今起きていること

従来の「成功」の定義が崩壊しつつある

社会は長年にわたり、「成功とは特定のライフステージを経ること」と考えてきました。しかし、現代ではこの概念が大きく揺らいでいます。

  • 価値観の多様化
    成功の定義は個人ごとに異なりつつあります。「昇進」や「高収入」よりも、「ライフワークバランス」や「自己実現」を重視する人が増えています。
  • 経済環境の変化
    住宅価格の高騰や雇用の流動化により、家を買うことや一つの企業に長く勤めることが現実的でなくなっています。
  • テクノロジーの進化
    リモートワークやフリーランスの拡大により、これまでのキャリアパスが唯一の道ではなくなっています。

「もはや結婚や家の購入、安定した職業を持つことが成功の唯一の指標ではない」 

 

社会システムが変化のスピードについていけない

社会の変化に対し、制度や慣習はまだ追いついていません。

  • 教育制度の遅れ
    学歴重視の文化が根強く残る一方で、実際の仕事ではスキルや経験が重視されるようになっています。
  • 社会保障制度のズレ
    従来の終身雇用モデルに基づく年金制度や福利厚生が、短期間の雇用やギグワーカーには対応しきれていません。

このように、個人の価値観が変わる中で、社会システムが適応できず、ギャップが生じています。


次に起こること

企業が「成功モデル」の変化に適応しなければならない

企業は、従業員や顧客が「成功」をどのように定義しているかを理解し、それに応じた戦略をとる必要があります。

  • 多様な働き方の提供
    フルタイム雇用だけでなく、プロジェクトベースの働き方や短時間勤務を積極的に導入する企業が増えるでしょう。
  • キャリアパスの見直し
    昇進一択ではなく、横方向のスキルチェンジや、ライフイベントに合わせた柔軟な働き方が求められます。
  • 社会的価値を重視するブランド戦略
    単に製品を提供するだけでなく、「この企業の製品を使うことが、自分の人生の成功につながる」と思わせるブランドが成長するでしょう。

個人が「流動的なキャリア」を前提に動き出す

企業が適応しない場合、人々は自らの道を切り開くようになります。

  • 複数の仕事を持つ(マルチキャリア)
    1つの企業に縛られず、複数の収入源を持つことが一般的になります。
  • 学び直し(リスキリング)が当たり前に
    AIや自動化の発展により、一つのスキルだけでは生き残れず、常に新しいスキルを習得することが求められます。(私もまさにコンサルタントでありながら、マクロだって書くし、Python機械学習・データアナリストの勉強もしているしと、幅を広げるために日々鼻水たらしながら奮闘中です・・・)
  • 「社会的評価」よりも「個人の満足」が重要に
    昔は「有名な企業に勤める」「高収入を得る」といった外的評価が成功の指標でしたが、今後は「自分が充実しているかどうか」がより重要視されます。 - お金より、私もWLB派です。。

「企業はもはや従業員に『終身雇用の安定』を提供するのではなく、『成長の機会』を提供しなければならない」


企業が実行すべきアクション

<従業員との関係性>

1. 「成功の定義」を従業員と共に再考する

従来の「昇進=成功」の考えを捨て、従業員自身が自分にとっての成功を定義できる環境を作る。

2. キャリアの多様性をサポートする

単一のキャリアパスではなく、横方向のスキル転換や、プロジェクト単位の業務を増やすことで、より柔軟な働き方を支援する。

3. 企業文化を「学び続ける組織」へ転換

従業員が新しいスキルを身につけられるよう、リスキリングプログラムを整備する。社内外の学習機会を提供し、変化に対応できる人材を育成する。

4. 「社会的価値」を企業の中心戦略に据える

消費者や従業員が「この企業に関わることで社会に良い影響を与えられる」と思えるようなビジネスモデルを確立する。

5. 柔軟な雇用形態を整備する

フルタイム以外の働き方(パートタイム、フリーランス、ギグワーカー)を企業戦略に組み込み、多様な人材が活躍できる環境を作る。

 

<顧客との関係性>

1.ターゲット層の新たな優先事項と人生における節目を理解する

  • 従来の「成功」の基準(マイホーム購入、結婚、長期的なキャリア形成など)が崩れ、人々の人生計画が短期化している。
  • 企業は、マーケティング戦略の再調整のために、市場調査やユーザージャーニーの見直しを行い、顧客の新しい優先事項に適応する必要がある

2.ブランドメッセージと製品・サービスを柔軟に適応させる

  • 変化する顧客のライフスタイルに対応し、ブランドメッセージや提供する製品・サービスの内容を定期的に見直すことが求められる。
  • 人生の節目の変化(例えば、結婚・出産の減少、キャリアの転換、定年後の活動の多様化)に対応した製品・サービス設計が必要。

3.エンゲージメント手法を変化に適応させる

  • 消費者の行動や価値観の変化を理解し、それに応じたエンゲージメント方法を採用する。
  • デジタルチャネル、パーソナライズされたサービス、ライフスタイルに合ったコンテンツ提供を通じて、ブランドとのつながりを深める。

4.顧客体験を包括的に管理し、ブランドとの関係を深める

  • 単なる取引関係ではなく、顧客がブランドと「長期的な関係」を築けるような体験を提供する。
  • 企業は、サービス・マーケティング・デザインの部門間で顧客体験のビジョンを共有し、一貫性のある顧客体験を確立する。

5.市場の変化に対応できる適応力を持つ

  • 顧客のニーズが変わるスピードに対応できるよう、柔軟な商品開発・サービス提供体制を確立する。
  • 消費者行動の短期化に適応するため、新しい購買モデル(短期契約、オンデマンドサービスなど)を模索する。

6.ライフ起点のアプローチを採用する

  • 企業は、顧客のライフスタイルや人生の選択を深く理解し、それに適応したマーケティングや製品・サービスの提供を行うべき。
  • 一般的な市場セグメントではなく、個々の顧客のライフスタイルに基づいたカスタマイズを重視する。

 


経営層が注目すべき重要なポイント

1. 成功の定義が変わっていることを理解し、企業戦略を見直す

  • これまでの「高収益」「市場シェア拡大」だけでなく、従業員や顧客の成功観と一致する企業ビジョンを持つことが必要。
  • 「社員が長く働き続けること」ではなく、「企業を通じて個人の成長が実現できること」が新たな成功モデルになる。

2. 従業員のキャリア観に適応し、多様な働き方を実現する

  • 終身雇用の前提は崩れつつあり、フレキシブルな雇用モデルやスキルベースのキャリアパスを用意する必要がある。
  • 人材流動性が高まる中で、「辞めさせない」よりも「また戻ってきたくなる企業」を目指す。

3. リスキリング(学び直し)を組織の文化として定着させる

  • 技術革新のスピードに対応できるよう、社員の学習機会を制度化し、新しいスキルを習得できる環境を提供する。
  • 教育投資を「福利厚生」としてではなく、「長期的な企業成長の戦略」として捉える。

4. 社会的価値を事業の中心に据える

  • 消費者も従業員も、企業の「社会貢献」に敏感になっている。単なるCSR活動ではなく、ビジネスモデルそのものが社会的価値を生むものになっているかを見直す
  • 企業の存在意義(パーパス)を明確にし、それが実際の事業戦略と一致していることを示す。

5. 企業文化を「成功の多様性」に適応させる

  • 「出世=成功」ではなく、横方向のキャリアパス、プロジェクトベースの働き方、副業支援など、多様な成功の形を支援する制度を整える。
  • 上司部下の関係性も再考し、一律の評価基準ではなく、個人の目標に応じた評価制度を構築する

6. 変化に柔軟に適応できる経営体制を構築する

  • 価値観の変化は今後も続くため、経営戦略や組織のあり方を定期的に見直し、環境変化に素早く適応できる体制を作ることが重要。
  • 経営層自身も学び続け、従来の「経営の成功モデル」が変わっていることを意識しながら意思決定を行う必要がある。

私の価値観は変えられる、でも....

あの、上の世代の方たちの価値観て、そう簡単には変わらないですよねぇ・・・。

しかも日本では、まだまだある程度価値観を変え辛い年代の方たちが経営のリードをしていることが多く、このような成功神話が終わってしまっていることをどう納得してもらうのか、どうしたら新しい価値観にアップデートした上で、企業戦略に落とし込めるよう動いてくれるのかは、別の議論やテクニックが必要だと思いました。

この辺で苦労している営業さんやコンサルタントの方、ぜひ体験談などお聞かせください。どうしたらいいんでしょうか?

 

おわりに

Trend5.「成功神話の解体」は、企業と個人にとって大きな転換点を意味します。
従来の「成功モデル」に頼るのではなく、変化する市場や価値観に適応できる企業が、次世代のリーダーとなるでしょう。企業は、個人が何を求めているのかを理解し、柔軟なキャリア形成と社会的価値を提供することで、持続的な成長を実現できます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

次回はIBMシンクタンクであるIBVのレポートを読んでみたいと思います。お楽しみに!